さんしょ日記

マンション持ち続けて30年。

とある”落ちこぼれ”姉弟の話(中学受験編)

遥か昔の話…とはいっても10年以内の話ではある。

その10年の間に激変するのが中受界隈なのであるが…

 

私は大学生時代に中学受験の個別指導のアルバイトをしていたのだが、その中で印象深いなエピソードがあった。

 

 

個別指導は基本的に集団塾についていけない子のための塾であるから、生徒のレベルは一般的な大手集団塾に比べば落ちる。

 

私は複数の子を常の担当として持っていたが、どの子も偏差値50程度の学校を第一志望にしていた。

 

その中のとある子は、サッカーが好きな子で、勉強さぼりがちな、まぁ典型的な小学生男子だった。

 

自頭も良くないし、勉強もそんなに好きではない。でもそういう子でも6年生の最後は頑張る(まぁ手遅れなんだけど…)。第一志望は無理かもしれないが、第二志望あたりには受かっていく。それは頑張らない彼なりの成功体験になる。

 

彼の姉も同じ塾に通っていて、一度だけ話したことがある。人懐っこくてリスみたいな彼とは対照的な、眼鏡をかけていておとなしそうな女の子だった。よくもこう正反対な姉弟になるものだと思った。

 

彼女は、そこそこの女子中堅校に合格して通っていた。

 

兄弟姉妹で難度の違う学校に通うことはよくあることだ。特に不思議なことではない。

 

ところが、ある日、弟の方から「姉が骨折した」という話を聞いた。聞くところによると、華道部での活動中、ずっと正座していて足を骨折したらしい。

 

 

私はこの姉弟はもしかして似た者同士なのではないかと思った。普通の子供なら、骨折するぐらいの痛い正座なら、崩したり、誰かに言う。少し賢い子なら、正座してそこまで足が痛くなるなら、正座の方法が間違っていることに気づく。骨折するまで正座するのは”考えない子”だけだ。この姉弟はたぶん同じだ。

 

ただ一つの違いがあった。姉は骨折してまで正座に耐える忍耐力があった。弟になかったものである。その差が――しかし決定的な差が――姉は中堅校に、弟はそうではない学校に行くことを決定させたのだと思った。

 

この話は一つの教訓を教えてくれる。自頭が悪くても、骨折するほどの忍耐力があれば、いい学校に行くことは可能である。才能か、努力か。まぁ忍耐力も才能かもしれないが、どちらか一つがあれば、最難関とはいわないが、いい学校には行ける。

 

彼は姉の愚行としてこの話をしたのかもしれないが、私は姉に感心した。「骨折するレベルの気合で行けば第一志望なんて余裕で受かると思うよ」といった。彼にはあんまり伝わってないようだったが。